吉田は、肉じゃがの名人と自負していた。彼は、自分の肉じゃがを食べさせれば誰でも幸せになれると確信していた。だから、彼は毎日肉じゃがを作って配り歩いた。吉田の肉じゃがを食べた人はみんな悶絶し、吉田に死に物狂いのスマイルを返すのだった。
そんなある日、四天王寺からラリーという外国人僧侶がやってきた。ラリーは吉田から肉じゃがをもらって一口食べると、驚いた表情をした。
ラリーは、肉じゃがの中に龍の肉が混じっていることに気づいたのだ。彼は四天王寺の僧侶で龍を敬う心を持っていた。吉田に怒りの目を向けたが、吉田は何も悪いことをしたと思っていなかった。
吉田は、ラリーにスマイルを返したが、それはとても無邪気な笑顔だった。
No.019|無邪気の手帖 https://one.maruch.net/story/355