ダニエルはたばこを吸いながら、窓の外を見た。台風が近づいているのがわかった。風が強くなり、雨が降り始めた。ダニエルは嫌な予感がした。
彼はチャトランという名前の犬を飼っていた。チャトランは大根役者と呼ばれる有名な俳優の元ペットだった。ダニエルは彼を拾って、家に連れてきた。チャトランはとても賢くて、芸を覚えていた。ダニエルはチャトランと一緒にテレビ番組に出演したり、コマーシャルに出たりしていた。チャトランはダニエルの収入源でもあった。
しかし、チャトランにはひとつだけ欠点があった。彼は消化器の問題を抱えていた。彼は何でも食べる癖があった。紙やプラスチックや金属など、食べられないものも食べてしまった。ダニエルは彼のお腹を気にかけていた。彼はチャトランに特別なフードを与えていた。しかし、チャトランはそれだけでは満足しなかった。彼はいつも何かを探して、食べてしまっていた。
ダニエルは窓からチャトランの姿を探した。彼は庭で遊んでいるはずだった。ダニエルは慌てて外に出た。チャトランがどこかに行ってしまったのではないかと心配した。彼は庭を探したが、チャトランは見つからなかった。ダニエルは近所に聞き回ったが、誰もチャトランを見ていなかった。
ダニエルは泣きそうになった。チャトランは彼の大切な友達だった。彼はチャトランを探し続けることにした。台風が来る前に見つけなければならなかった。
その頃、チャトランはとある家の前で立ち止まっていた。彼はその家の娘っこに一目惚れしてしまったのだ。娘っこは可愛らしいピンク色のワンピースを着ていて、髪にリボンをつけていた。彼女は庭で花を摘んでいた。チャトランは彼女に近づきたかったが、勇気が出なかった。彼はしばらく彼女を見つめていた。
すると、娘っこが振り返って、チャトランに気づいた。「わあ、可愛い犬!」と言って、笑顔で近づいてきた。「こんにちは、君の名前は何?」と言って、チャトランの頭を撫でた。
チャトランは嬉しくなって、しっぽを振った。彼は娘っこになついてしまった。彼は彼女の手をなめたり、耳を傾けたりした。娘っこはチャトランが大好きになった。
「君は迷子なの?どこから来たの?」と言って、首輪を探した。しかし、チャトランには首輪がなかった。「君に飼い主はいないの?じゃあ、私が飼ってあげようかな」と言って、抱き上げた。チャトランは娘っこに抱かれて、幸せだった。彼はダニエルのことを忘れてしまった。チャトランは娘っこと一緒に家に入ろうとした。
しかし、そのとき、大きな音がした。空が暗くなり、風が吹き荒れた。台風が来たのだ。チャトランは驚いて、娘っこから飛び降りた。彼は台風が苦手だった。チャトランは急にダニエルに会いたくなり、ダニエルの家に戻ろうとした。しかし、道がわからなかった。チャトランは泣きそうになった。
チャトランは走り回って、ダニエルの家を探した。しかし、どこにも見つからなかった。疲れて、へとへとになり、ついには道端に倒れてしまった。
そのとき黒い車が近づいてきた。それはダニエルの車だった。
「チャトラン!やっと見つけたよ!」と言いながら、チャトランを抱き上げ心配そうに見ると「大丈夫か?怪我はないか?」と言った。チャトランはダニエルを申し訳なさそうに見つめた。
一人と一匹は車に乗って、家に帰った。
台風はすでに去っていた。空は晴れて、虹がかかっていた。
No.014|長編・台風と犬 https://one.maruch.net/story/319