ドラムビートに合わせて、村井は包丁を振り回していた。彼は料理が得意だったが、機械音痴だった。
オーブンのタイマーが鳴っても、彼はボタンの操作に手間取り、ミキサーのブザーが鳴ってもコードの抜き方に悩み、トースターの焦げ臭さがしてもレバーの下ろし方に苦労するほどの機械音痴だった。
そこへ、沢尻がやってきた。村井の同僚でズルいやつだった。
沢尻は村井の料理を見て、あざ笑った。
「こんなもので勝てると思ってるのかしら? あんたって馬鹿っ?!」
村井は沸々と怒りが込み上げてきたが、何も言い返すことができなかった。
ただ顔を赤らめたまま、ドラムビートに乗って包丁を振り回していた。
No.024|ビートマニア https://one.maruch.net/story/404