No.003|台風だから犬をしまえ

ある日、娘っこは父親に犬を飼いたいとせがんだ。父親は嫌がったが、娘っこの涙に負けて、ペットショップに行った。そこで見つけたのは、ダニエルという名前の小さな白い犬だった。娘っこは一目惚れして、父親に買ってもらった。

ダニエルはとても賢くて、娘っこの言うことをよく聞いた。しかし、父親は犬が苦手で、ダニエルに冷たかった。毎日、たばこを吸ってテレビを見ているだけだった。ある日、台風が近づいてきた。父親はテレビの天気予報を見て、大きな声で言った。「台風だから犬をしまえ!」娘っこは驚いて、父親に聞き返した。「どうしてですか?」父親は怒って言った。「台風が来ると犬は吹き飛ばされるからだ!早くケージに入れろ!」娘っこは泣きながら、ダニエルをケージに入れた。ダニエルは悲しそうに鳴いた。

その夜、台風がやってきた。風が強くて、雨が激しくて、雷が鳴っていた。娘っこはダニエルのことが心配で眠れなかった。ケージの中で震えているダニエルの姿が目に浮かんだ。娘っこは決心した。ダニエルを助けに行くのだ。娘っこは布団から抜け出して、ケージのある部屋に向かった。しかし、そこには驚くべき光景が待っていた。

ケージの中ではなく、ケージの上にダニエルがいた。そして、ダニエルの隣にはチャトランという名前の黒猫がいた。チャトランはペットショップの隣に住んでいる野良猫で、ダニエルと仲良くなっていた。チャトランは台風の間隙を縫って、家に侵入し、ダニエルをケージから出してやったのだ。二匹は仲良く鰹節を食べていた。鰹節は父親が買っておいたものだった。

娘っこは二匹の姿を見て、笑ってしまった。父親も起きてきて、二匹を見て驚いた。「なんだこれは!」父親は怒鳴った。「台風だから犬をしまえと言っただろう!」しかし、二匹は父親の声にも動じなかった。チャトランは父親に舌を出して、「ニャー」と言った。ダニエルも父親に尻尾を振って、「ワン」と言った。

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