彼は操られていると感じた。スープに浮いた油のように、自分の意志が表面に張り付いているだけで、奥底には他人の思惑が渦巻いている。
ブロックに囲まれた部屋で、頭痛に苦しみながら、華麗なレシピを考えることが彼の仕事だった。森山という名前の上司からは、常に厳しい指示と評価が下された。
彼はスープに浮いた油を見て、何かがおかしいと感じたのだ。
彼は頭痛に苦しみながら、自分の人生が華麗な嘘であることを理解した。彼はレシピを作ったのではなく、レシピに作られたのだった。
彼は笑ってしまった。この笑いは自分のものではなかった。
彼はスープをひっくり返して、油を床にこぼした。それから、森山の顔に向かって唾を吐いた。
彼は自由になったと思った。しかし、それもまたレシピの一部だったのだ。
No.011|スパイスプロトコル https://one.maruch.net/story/295