「台風が来るって聞いてたけど、こんなに激しいなんて……。」娘っこのマリコは、窓から見える風景に怯えていた。
家族は、避難準備を整え、過ごし方を考えていた。しかし、その時、犬のワンという声が聞こえた。「犬……?うちには犬なんていないはずだけど……。」チャトランは不思議そうに言った。ダニエルが外を見てみると、真っ黒な犬が庭に立っていた。ダニエルは娘っこを抱きしめ、犬を見つめた。
「怖い……。」娘っこは、ダニエルにしがみついた。
犬は、家に入り込み、不気味な咆哮を上げた。ダニエルは、消火器を手に取り、犬に向かってスプレーした。しかし、その瞬間、犬は化け物のように変貌し、ダニエルを襲いかかった。チャトランは、小銭入れから煙草を取り出した。その時、犬の姿が見えなくなった。ダニエルは、犬が消えたことに安心し、リビングに座り込んだ。
しかし、ダニエルが座っていた場所に、黒い犬の顔が浮かんだ。ダニエルは驚き、大根役者のように、身をよじりながら、犬の顔を避けた。その時、雨風がますます強くなり、家族は犬の姿を見失った。それからというもの、家族は犬を見かけなくなったが、不気味な気配は残った。
家族は、今でも犬がどこかにいるのではないかと、気をつけて暮らしている。
そして、台風が来るたびに、犬を思い出すのだ。
No.001 – 台風と犬 https://one.maruch.net/story/29